糸芭蕉の原木から布として完成するまで数々の工程がありますが、それぞれの工程において、南国の暮らしの知恵と感覚が凝縮されているように思います。それらの多くの手法が、現代に継承されてきました。
植え付けから3年を経て初めて繊維が採れるという、気の長い織物です。「芭蕉布こもれび工房」の場合、畑を切り開く段階から携わっています。さすがに、このときばかりは機械のお世話になりましたが、植えつけから後の作業は全部手作業でおこなっています。手作業ということには、こだわりが有ります。
織物作業のイメージを小ぎれいにとらえると、芭蕉布の場合は当てはまりません。「織る」工程は全体の中では一部でしかなく、畑作業がかなりの割合をしめます。 炎天下の作業は汗だくになり、一時的なダイエットになるとしても、かなり厳しいものがあります。
成長した糸芭蕉は、葉の部分も含めると3メートルほどの高さになり、手入れを怠ると、畑の中はジャングル状態です。周りが見えないので方向感覚も失い、不安に駆られることがあります。そんなとき、葉と葉の隙間から洩れてくる陽の光の美しさに、はっとすることがあります。森の中の木洩れ日のようで、ほっとさせられ、息を深く吐き出しています。
ゆっくりゆっくり、自然の営みとともに過ごせるようにしたいと思っています。
芭蕉布ができるまで
葉落とし
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芯止め
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苧倒し(うーたおし)
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苧剥ぎ(うーはぎ)
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苧炊き(うーたき)
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水洗い
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苧引き
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苧干し
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チング巻き
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苧績み(うーうみ)
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経 糸(たていと)→経地→経絣→撚り掛け→整 経
緯 糸(よこいと)→緯地→緯絣→撚り掛け→整 経
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煮 綛(にーがし)
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絣糸の組合せ
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絣結び
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管巻き
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染 色
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絣解き
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仮筬通し(かりおさとおし)
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糸繰り(いとくり)
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巻取り
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管巻き
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綜絖通し(そうこうとおし)
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筬通し
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製 織